上場時の資本構成から当該事業の特徴や資本政策の考え方について分析、考察の第9回目となります。今回は「モノづくりのあり方を変え、世界を変えていく」ことをミッションに掲げ、製造業界向けに、AI技術及びIoT技術等の新しい技術を活用したサービスを提供している 株式会社VRAIN Solution(以後、VRAIN 社という)について見ていきます。
資本政策を中心に、過去の情報や売上等の数値情報も参考にしながら VRAIN 社の特長を把握、分析していきたいと思います。
事業の概要
VRAIN 社は、2020年3月創業、2024年2月22日にグロース上場されています。
事業内容は、生産性向上のソリューションとして、AIの技術を活用し自社開発する「A Iシステム」及び顧客のDX推進のための「DXコンサルティング」の2つを展開されています。
なお、両サービスは一体として提供しているためセグメントとしては単一の「製造業DX事業」となっています。
資本構成
次に上場時の資本構成です。下記にⅠの部の「株主の状況」について表形式でまとめました。

上記株主構成から以下の特徴があると言えます。
1.代表取締役社長によって株式(潜在株含む)の過半数を保有
代表取締役社長及び社長の資産管理会社によってVRAIN社の発行済み株式の77.3%、潜在株式を含めても75.8%という高い比率の株式を保有しています。
そのため、特別決議が必要となる重要な決議事項についてもスピーディな意思決定が可能な状態であったと考えられます。結果として創業から4年弱という短期間での上場が達成できたとも考えられます。
2.資金調達目的での株式発行
VRAIN社では発行済み株式総数の17%をVCが保有しています。この保有割合はこれまで~資本政策を読む~のなかで見てきた8社のうち、VCから資金調達している6社のなかでは2番目に少なくなっています。
これは、創業から上場まで4年弱という短い期間であったということ、申請書類から分かるように、創業初年度から黒字であったということ、さらに事業成長に大きな投資を必要としないビジネスモデルであったということが影響していると考えられます。
3.取締役、従業員へのインセンティブ
VRAIN社では取締役を中心にインセンティブとして、生株及びストック・オプションを付与しています。
なお、ストック・オプション付与対象者は上場時2名とかなり限定的となっています。また従業員は1名のみで他は取締役への付与となっています。
つまりインセンティブの付与対象者をかなり限定していた方針であるということが分かります。
以上から、VRAIN社社は創業から上場まで短期間であったこと、創業当初から黒字経営であったこと、事業成長に大きな資金を必要としていなかったことから、資本政策としては経営者に権限を集中させ、意思決定スピードを重視した方針であったことが考えられます。
また、VRAIN社は上場時時価総額が500億円超となっており、創業4年の企業でありながら高い期待を持たれているのではないでしょうか。
事業成長を考えるうえで、資本政策を有効活用することは事業をドライブさせる要因となるため、自社に合った資本政策を策定が重要となります。
場合によっては、外部の専門家に資本政策の策定支援を依頼することも有効かもしれません。
今後も他のビジネスモデルにおける資本政策について考察していきたいと思います。
以 上
