新規上場企業分析 ~資本政策を読む~ : 株式会社オプロ

上場時の資本構成から当該事業の特徴や資本政策の考え方について分析、考察する「新規上場企業分析 ~資本政策を読む~」の第16回目となります。 

今回は、「未だないピースを発明する」をコンセプトにデータオプティマイズソリューション及びセールスマネジメントソリューションの提供を通じて持続可能なビジネスと社会を実現することを掲げ、2024年8月21日にグロース市場へ上場した株式会社オプロ(以後、オプロ社という)について見ていきます。 

新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)をもとに上場までの資本政策を読み解き、会社の特徴を分析していきたいと思います。  

事業の概要

オプロ社は、1993年6月に設立した有限会社里見企画事務所を1997年4月に設立した株式会社オーエスピー(現オプロ社)が吸収合併してできました。そのためグロース市場上場までに30年近くかかっています。グロース市場へ上場される企業の平均創業年数が12年のため、グロース上場企業の中では上場までに時間がかかった企業となります。 

オプロ社は単一セグメントとして「クラウド売上」、「製品売上」、「製品保守売上」、「保守売上」及び「その他売上」で構成されています。主力サービスの「クラウド売上」が全売上の90%以上を占めています。 

また「クラウド売上」は2007年から開始している、データオプティマイズソリューション及びセ ールスマネジメントソリューションの2つのソリューションで構成されており、データオプティマイズソリューションがそのうち75%近くを占めています。 

業績としては、「企業の概況」のうち「【主要な経営指標等の推移】」から2019年3月期から2021年3月期までの3期にわたって最終損益が赤字となっていますが、翌期に黒字転換し、直前前期である翌々期には欠損も解消されています。 

資本構成

次に上場時の資本構成です。下記にⅠの部の「株主の状況」について表形式でまとめました。 

上記株主構成とⅠの部の「株式等の状況」から以下の特徴があると言えます。 

1.役員の持ち株比率が顕在株ベースで70.6%(潜在株ベースで69.5%) 

代表取締役社長と取締役、監査役によって、会社法で規定される特別決議事項を決議できる株数を保有しています。そのため会社の意思決定が迅速に反映される体制となっているものと考えられます。 

なお、上記表の「その他」には元取締役や元監査役が含まれており、退任後も株を保有しています。近年のベンチャー企業では退任、退職時には会社もしくは関係者が株を買い取る形となっていることが多くなってきていますが、オプロ社は業歴が長いこともあり、当時そのような買取条項を付けていなかったと考えられます。 

2.従業員へのインセンティブとして持株会の設置及びストックオプションの発行を実施。 

グロース市場上場を目指す企業は、創業メンバーである従業員がストックオプションを保有している場合が多く見受けられます。 

オプロ社では従業員に対して、ストックオプションの付与と従業員持株会を活用した資本政策となっています。特に上場前から従業員持株会を設置している点については、業歴の長い会社においてよく見られる資本政策で、黒字経営企業における従業員への利益還元目的として活用されています。 

一方で、業歴の浅いベンチャー企業では赤字経営となっていることが多く、持株会制度よりもストックオプションの活用が中心となっています。 

オプロ社では2020年2月からストックオプションの付与を開始しており、上場を見据えたインセンティブとして活用を始めたものと考えられます。なお、ストックオプションの発行割合は潜在株ベースで2.5%となっており、グロース上場企業の平均発行割合約8%と比較すると低い付与率となっています。 

3.外部から株式による資金調達を実施していない 

オプロ社では資本業務提携目的で1社から出資を受けているが、その発行割合は顕在株ベースで1.5%と小さいため、事業資金を株式で積極的に調達してこなかったと考えられます。 これはオプロ社の業歴が30年近くある一方、資本業務提携による出資受け入れが2021年5月とオプロ社の社歴のなかでは最近であり、その調達額が25百万円と売上や利益の規模と比べて少額であることから業務提携目的が主だったと推察されます。 

以上から、オプロ社は1993年創業時はオンプレ製品の販売、保守を中心に事業展開していましたが、2007年から開始したデータオプティマイズソリューション及びセ ールスマネジメントソリューションが軌道に乗り、黒字展開したことで上場を達成することとなったと考えられます。 

第12回、第13回でご紹介してきた豆蔵社やハンモック社に代表される、業歴の長いIT関連企業のクラウドサービスへの転換を行って上場しており、現在のDX化の流れを上場達成企業からも見ることができます。 

資本政策は事業活動における様々な選択肢を考慮しながら、作成することになります。 柔軟性のある資本政策を作成することで、意思決定の幅を広げることが可能となります。 そのため、外部の専門家に資本政策の策定支援を依頼することも有効かもしれません。 

以 上

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