新規上場企業分析 ~資本政策を読む~ : 株式会社yutori

上場時の資本構成から当該事業の特徴や資本政策の考え方について分析、考察する「新規上場企業分析 ~資本政策を読む~」の第22回目となります。 

今回は、「TURN STRANGER TO STRONGER(ハグレモノをツワモノに)」をミッションにアパレル事業として複数ブランドを展開している株式会社yutori(以後yutori社という)について見ていきます。 

yutori社は、2023年12月17日にグロース市場へ上場しています。 

これまで同様、新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)をもとに上場までの資本政策を読み解き、会社の特徴を分析していきたいと思います。

事業の概要

yutori社は、2018年4月にアパレル販売を主な事業として設立されました。その後2020年7月に株式会社ZOZO(以後ZOZO社という)と資本業務提携契約を締結し、その後上場を達成されている、スイングバイIPO(※)の好事例です。 

業績としては、「企業の概況」のうち「1【主要な経営指標等の推移】」より創業初年度である2019年3月期から直前期である第5期まで連続して増収となっています。直前期の最終損益は赤字となっていますが、yotori社のIRページでは申請期である2024年3月期については225百万円の黒字となっています。 

※スイングバイIPO:大手企業のサポートを受けて成長した企業が、株式市場に上場する新たなIPO手法で、2024年3月、IoTプラットフォーム事業を手掛ける株式会社ソラコムが東京証券取引所グロース市場に上場し誕生したモデル。 

資本構成

次に上場時の資本構成です。下記にⅠの部の「株主の状況」について表形式でまとめました。 

上記株主構成とⅠの部の「株式等の状況」から以下の特徴があると言えます。 

1.経営陣の持ち株比率が顕在株ベースで49.0%

yutori社は2020年7月にZOZO社と資本業務提携契約を締結しています。その結果、【株主の状況】によるとZOZO社の持株比率は顕在株ベースで51%となっています。 

一方で、経営陣の持株比率は49%となっており、会社法で規定される普通決議事項以上の決議についてはZOZO社との協議が必要な状況となっています。またZOZO社から取締役が1名派遣されています。 

以上の状況から、yutori社の経営はZOZO社グループ一体で行われていたことが想定されます。 

2.ストック・オプション制度の導入

yutori社では新株予約権を計5回発行しています。 

そのうち第1回から第4回については退職及び放棄等により全ての権利が喪失または放棄されています。 

第5回は、yutori社の取締役及び従業員に対して新株予約権が発行されています。また、その発行割合は潜在株式考慮後の8.6%相当となっています。 

なお当該ストック・オプションについてはベスティング条項は付与されておらず、2025年9月1日以降2033年8月31日の期間で権利行使できる内容となっています。 

これらの状況を勘案すると、yutori社ではストック・オプションを役職員に対してこれまでの貢献に対するインセンティブとして付与している可能性が高いと考えられます。

3.ZOZO社との資本業務提携

yutori社は2020年7月にZOZO社と資本業務提携契約を締結しています。 

直近の決算期である2020年3月期の売上高が約1.4億円で、上場直前期の2023年3月期の売上高が約24.7億円と3年で17倍超の売上成長となっています。また2023年3月期の売上高約24.7億円のうち31.5%がZOZOTOWN経由での売上となっています。 

そのため、資本業務提携によってyutori社の売上に大きな影響があり、上場達成への貢献も少なくなかったものと考えられます。 

yutori社とZOZO社の資本業務提携はスイングバイIPOの代表例の一つとされています。資本業務提携後の約3年で上場を達成していることからも、スイングバイIPOの良い事例となっています。 

以上から、yutori社はアパレル事業の展開にあたって、ZOZO社との資本業務提携を通じて売上を伸ばし、創業から6年弱という短期間での上場を達成しています。併せて、ストック・オプションも活用しており、資本政策を戦略的に実行してきた企業であると考えられます。 

資本政策は事業活動における様々な選択肢を考慮しながら、作成することになります。 
柔軟性のある資本政策を作成することで、意思決定の幅を広げることが可能となります。 
そのため、外部の専門家に資本政策の策定支援を依頼することも有効かもしれません。 

以 上

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!