上場時の資本構成から当該事業の特徴や資本政策の考え方について分析、考察の第13回目となります。
今回は、「組織を強くするIT環境をすべての人へ」をミッションに掲げ、2024年4月11日にグロース市場へ上場した株式会社ハンモック(以後、 ハンモック社という)について見ていきます。
新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)をもとに上場までの資本政策を読み解き、会社の特長を分析していきたいと思います。
事業の概要
ハンモック社は、1994年4月に設立されました。グロース市場上場日が2024年4月11日のまた、上場まで30年かかりました。グロース市場へ上場される企業の平均創業年数が12年のため、グロース上場企業の中では上場までに時間がかかった企業となります。
ハンモック社はネットワークソリューション、セールスDXソリューション、AIデータエントリーソリューションの3ソリューションを提供しており、製品の提供形態としては、オンプレミス型とクラウド型の両方の形態があります。両形態での製品提供ができることで、顧客は民間企業から官公庁まで、また、事業規模も大手企業のみならず、中小企業まで幅広く対象とすることが可能となっています。
ネットワークソリューションでは、企業のPC及びPCネットワーク等のIT資産管理、セキュリティ対策の面から統合的に管理するソフトウエアを提供しています。
セールスDXソリューションでは、法人営業の生産性向上・業務効率化を図り、企業の売上拡大を支援する製品の開発・販売・運用支援サービスを行っています。
AIデータソリューションでは、AI OCR技術をベースとしたデータ入力業務効率化のソリューションを提供しています。
資本構成
次に上場時の資本構成です。下記にⅠの部の「株主の状況」について表形式でまとめました。

上記株主構成とⅠの部の「株式等の状況」から以下の特徴があると言えます。
1.役員の持ち株比率が顕在株ベースで98.2%(潜在株ベースで95.5%)
「役員の状況」からハンモック社の創業者が取締役会長を務め、その血族関係にある若山大典氏が代表取締役社長を務めています。その他、社長の血族や配偶者が株主となっており、社長の親族によって大半の株式が保有されています。
そのため役員と株主が同一もしくは近い関係にあるため、社長または会長の意思が迅速に反映される体制となっているものと考えられます。
2.従業員に対して持株会の設置及びストックオプションを発行している
グロース市場上場を目指す企業は、創業メンバーである役員や従業員が生株やストックオプションを保有している場合が多く見受けられます。
ハンモック社では従業員で株式を保有している方はおらず、ストックオプションと従業員持株会を活用した資本政策となっています。また発行しているストックオプションの割合が潜在株ベースで2.7%となっており、グロース上場企業の平均発行割合約8%と比較すると低い付与率となっています。
3.外部から株式による資金調達を実施していない
ハンモック社では1名の個人が1.2%の株式を保有しているのみで、それ以外の外部株主が存在しません。
これはハンモック社の「企業の概況」に記載されている上場前5期の業績を見ると2021年3月期以外は最終損益が黒字となっていること、2021年9月に社長に対する有償第三者割当が行われていることから、創業以来継続的に黒字を計上し、外部から株式による資金調達を必要としないビジネスを展開してきたことが考えられます。
以上から、ハンモック社は1994年創業時からソフトウエアの開発力を強みとして着実に業績を積み上げて、代表者親族による経営を行ってきた会社であると考えられます。業歴の長い会社や外部から株式による資金調達を必要としないビジネスを展開されている会社にとって、参考となれば幸いです。
資本政策は事業活動における様々な選択肢を考慮しながら、作成することになります。 柔軟性のある資本政策を作成することで、意思決定の幅を広げることが可能となります。
そのため、外部の専門家に資本政策の策定支援を依頼することも有効かもしれません。
今後も新規上場企業のビジネスモデルにおける資本政策について考察していきたいと思います。
以 上
