上場時の資本構成から当該事業の特徴や資本政策の考え方について分析、考察する「新規上場企業分析 ~資本政策を読む~」の第20回目となります。
今回は、「BE THE SUN(太陽のように熱い情熱を燃やし、世界に大きなインパクトを与える存在になる)」を企業としてのビジョンに掲げ、世界を照らす発明を続けることをミッションとして、国内最大級の「レシピ動画サービス」である「クラシル」を中心に複数のプロダクト・サービスを展開しているdely株式会社(以後dely社という)について見ていきます。
dely社は、2024年12月19日にグロース市場へ上場しています。
これまで同様、新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)をもとに上場までの資本政策を読み解き、会社の特徴を分析していきたいと思います。
事業の概要
dely社は、2014年4月に設立し、複数のプロダクト・サービスを提供しています。上場時の事業としてはプラットフォーム事業の単一セグメントとしており、なかでもBtoC事業をリテールデジタルプラットフォーム事業と呼んでいます。
業績としては、「企業の概況」のうち「1【主要な経営指標等の推移】」より2021年3月期から最終損益が黒字に転換しています。一方直前前期である2023年3月期及び直前期である2024年3月期については、2021年3月期及び2022年3月期と比較して売上は増加しているものの最終損益は減益となっています。
これは2023年2月に買収したクリエイターマネジメント事業及び2023年11月に開始した人材プラットフォーム事業によるものと考えられます。
資本構成
次に上場時の資本構成です。下記にⅠの部の「株主の状況」について表形式でまとめました。

上記株主構成とⅠの部の「株式等の状況」から以下の特徴があると言えます。
1.経営陣の持ち株比率が顕在株ベースで24.0%
経営陣のなかでは代表取締役社長のみが顕在株を保有しており、その持ち株比率は24.0%となっています。そのため会社法で規定される普通決議事項以上の決議については他の株主との協議が必要な状況となっています。なおdely社は2018年7月にヤフー株式会社(現LINEヤフー株式会社、以降ヤフー社)の連結子会社となっており、【株主の状況】でもヤフー社が筆頭株主となっており、両者での持ち株比率は顕在株ベースで53.25%と普通決議事項を決議できることができる状態となっています。
そのため、ヤフー社のグループ会社として一体で会社経営を行っていたことが想定されます。
2.ストック・オプション制度の導入
dely社では新株予約権を計15回発行しています。
そのうち1回(第7回)は時価発行新株予約権信託としてdely社及びその子会社・関連会社における取締役、監査役及び従業員向け、もう1回(第12回)は社外協力者向けとなっており、当該分を除いた残り13回はdely社の取締役、監査役及び従業員へのストック・オプション付与となっています。
またストック・オプションについてはいずれもべスティング条項が付与されており割り当てられた新株予約権を全て行使するためには3年から4年の参画期間(役職員としての地位を有する期間)を必要としています。
これらの状況を勘案すると、dely社ではストック・オプションを役職員に対して中長期の組織・事業貢献へのインセンティブとしていたと考えられます。
3.ヤフー社との資本提携
dely社は2018年7月にヤフー社と資本提携を結んでいます。
2017年10月期の売上高が2億8900万円、営業損益が30億6700万円の赤字だったと右記記事(https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1807/11/news100.html )に記載があり、この情報が正しいとするとその後、約3年で売上高は50億円を超え、最終損益は黒字化を達成しているため、ヤフー社との資本提携による効果が大きかったことが伺えます。
スタートアップが事業会社から出資を受け入れる場合、提携による業績向上を目的の一つとすることがあり、dely社とヤフー社の提携は良いロールモデルになると考えられます。
以上から、dely社はレシピ動画サービスを中核ビジネスとして、事業会社との提携やストック・オプションを活用して事業成長を遂げ上場に至っており、資本政策を戦略的に実行してきた企業であると考えられます。
資本政策は事業活動における様々な選択肢を考慮しながら、作成することになります。 柔軟性のある資本政策を作成することで、意思決定の幅を広げることが可能となります。 そのため、外部の専門家に資本政策の策定支援を依頼することも有効かもしれません。
以 上
